tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語で名言を:あなたの今日は永遠である(アウグスティヌス)

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 ボッティチェリ『書斎の聖アウグスティヌス

 

                                               March.29.2018 

 

 

アウグスティヌス は,

354年,現在のアルジェリア生まれの

古代キリスト教神学者でラテン教父です

 

青年時代にはゾロアスター教ユダヤ教

キリスト教グノーシス主義の流れを汲む

マニ教を信仰していましたが,

キケロの書物に触れてから哲学に関心を持ち,

ネオプラトニズムを知り,

34歳の時にミラノで,息子とともに

キリスト教の洗礼を受けました

 

古代カトリックの理論的支柱であり,

その後のキリスト教の原型を作ったとさえ

言われます

 

本日はこの,  アウグスティヌス

名言のいくつかをご紹介したいと思います

アウグスティヌス - Wikipedia参照

 

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アウグスティヌスは時間論で知られています

 

今に次ぐ今に次ぐ今

 

という禅の至言にも通底します「永遠の今」

について明言した,

西欧世界で最初の哲人とも言われています

 

The today of yours is eternal.

あなたの今日は永遠である

 

その根拠を次のように述べています

Indeed, it’s always the present that exists.

Practically, the past is not,

and the future is not yet.

げんに存在するのは常に現在のみである

じっさい,過去はもはや存在せず,

未来はまだ存在しないからである

個人的にはこの発想が非常にしっくりときます

アウグスティヌスは『告白』の中で,

過去=記憶, 未来=予測であり,

現在とはその両方を省みる直観である,

と述べています

過去はもう過ぎ去ったもので,

未来は未だに来ていません

しかも,未来は来たら,もう現在です

現に在るのは現在だけです

どの角度から考えましても,

これは言い得て妙な見解だと思います

こうした考え方から, アウグスティヌス

神の千年王国は「今・ここにある」んだと

熱く語っています

 

そうした意味で,

過去に対しての後悔は積極的な意味を持ちません

 

Let’s thank for having had what you’ve lost,

not feeling sorry for it.

失ったものを悲しむのではなく,

それを持てたことを感謝しよう

 

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続きまして,

東洋思想にも通じるかと思われますフレーズです

 

Do you know what the minute sands are?

If you load them on the ship, it will sink.

細かい粒の砂が何であるかわかりますか

それを船に積めば船は沈むのです

 

老子

 

塵も積もれば山となる

千里の道も一歩から

 

が,自然に思い浮かびます

小さなことの積み重ねが,気がつけば

とてつもない大きな力を持ってしまっている

 

それを積み重ねるには習慣が必須です

 

Habit is our second nature.

習慣は第二の天性である

 

このよく知られたことばは,

アウグスティヌスのものだったのです

 

彼はネオプラトニズム(新プラトン主義)にも

傾倒していたこともあり,

ソクラテスの「無知の知」を彷彿とさせる

コメントも残しています

 

It is by knowing your power is not enough

that it is filled.

自分の実力が不十分であることを知ることでこそ,

自分の実力が充実するのである

 

洋の東西を問わず,特に学問において

知的謙虚さは必須のものとされます

自分が目の前のものを見たときに,

そこに有限を見るか無限を見るか…

「もうこれはすべて分かった」とするか,

「これはすべて分かるわけがない」とするか

 

当然後者の方は,  

自分の見栄や過信など持っていては,

備えられる姿勢ではありません

 

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アウグスティヌスは,生涯で幅広く

住む場所を変えています

旅を通じ様々な知見を得た上で,

独自のキリスト教信仰を実践しました

残された文献から,自分にとっての外と内の

両方に対するまなざしの必要性を

説こうとする熱い思いがうかがえます

 

God has the wind,

but we have to raise the sail.

神は風を備える,

だが人が帆をあげなければならない

 

心身ともに一隻の船に喩え,

神はエネルギーを与えてくれるけれども, 

その船の動く方向を決定する帆を張るのは,

自分でしかない,と指摘します

 

そして,  旅に出ることの重要性を

次のように説きます

 

The world is a book, and those who do not travel,

read only one page.

世界とは一冊の本であり,旅に出ない者は,

1ページ目ばかり読んでいるのだ

 

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時折耳にします「自分探し」ということばには,

個人的に昔から疑問があります

 

自分を探しても見つかるわけがありません

自分は自分で見られないのですから

自分で「自分」だと思うのは自由ですが,

それはせいぜい鏡に映る鏡像のようなものです

何らかの形で認識することが

できるかもしれませんが,

そもそも,

対象として自分をとらえようとすること自体が,

根本的な倒錯であり幻想なのかもしれません

 

アウグスティヌスは,  ことばの上では

先程の「旅」にまつわるコメントとは対照的に,

内面世界を直視することこそが,

真理に至る道だと解きます

 

Don't to go outside, and return to yourself;

truth lies just in your inner person.

外に出るなかれ, 自分自身に立ち返れ,

内なる人にこそ真理は宿る

 

こうした,  一見矛盾するフレーズを

同一人物が残したからといって,

その人が理解不能だとするのは

早急と言うものです

 

誰しも自分の中には沢山の層があり,

それぞれの別な層では,逆説的で

見かけ上全然違う側面があって当然だと思います

 

そうした「多層な自分」を

どうバランスよくセルフコントロールしていかれるか,

それが今後の超情報化社会の中では,

必須のアイデンティティだと確信しております

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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