March.15.2018
スティーヴン・ホーキング博士は，1942年に
イギリス・オックスフォードに生まれた
理論物理学者です
21歳のときに運動ニューロン疾患と診断されました
これは、筋萎縮性側索硬化症（ALS）の
珍しいケースと言われています
ですが，ホーキング博士は
医師から余命数年と宣告されたにもかかわらず，
50年以上健在でした
ケンブリッジ大学教授を務めながら，
ビッグバンなど宇宙の起源や
ブラックホールの研究で
比類なき業績を残されました
宇宙創生直後に小さな
ブラックホールが多数発生することや，
その勢力を弱め，やがて爆発により消滅するとする，
「ホーキング放射」と呼ばれる理論などを
構築され，量子宇宙物理学の基礎を築かれました
本日は, 昨日永眠されましたホーキング博士の
ご冥福をお祈りしつつ, 名言をいくつか
ご紹介したいと思います
まずは, 脳についてのコメントです
I regard the brain as a computer
which will stop working
when its components fail.
There is no heaven or afterlife
for broken down computers;
that is a fairy story.
脳は，部品が壊れると動かなくなるコンピューター
のようなものだと私は見なしている
壊れたコンピューターに
天国も来世もない
つまり，それはおとぎ話だ
博士は, 徹底した科学的視点からの発言で有名でした
このことばからもわかりますように,
脳はコンピューターの延長と捉えられていました
数年前, AIが人類にとっての脅威となる
と発言されて話題も呼びました
また, 地球を「どこにでもある星」と捉えた上で，
こう発言されています
We are just an advanced breed of monkeys
on a minor planet of a very average star.
But we can understand the Universe.
That makes us something very special.
私たちは，極めて平均的な星である
取るに足りない惑星に住む進歩した猿の種にすぎない
しかし，私達は宇宙を理解できる
そのために，かなり特別な存在なのだ
このようなブラックユーモアでも,
博士は有名でした
トランプがアメリカのパリ協定脱退を表明した際は，
次のように語られました
His decision will drive this planet into a corner.
彼の決定は地球を追い込むことになるだろう
続きまして, 博士がわれわれ人間の
あるべき姿について述べられたコメントです
I try to lead as normal a life as possible,
and not regret the things
it prevents me from doing.
私はできる限り普通の人生を歩もうとしている
そして, できないことを
悔やもうとは思わない
できないことができなくて悔やむ
これが凡人の苦悩です
ですが，博士はできないことを悔やまない…
裏返しますと，できることは必ずやる，
というポジティブ・シンキング
だということになります
では，できることを必ずするために，
私たちの持つべき心構えとは…
We should seek the greatest value of our action.
私たちは自らの行動の最大の価値を模索すべきだ
今後, 資本主義経済の貨幣中心主義が
価値中心主義に移行すると言われています
これまで「お金」が果たしてきた役割が,
パラダイム・シフトし,
社会の中で無数のコミュニティーが生まれ，
その各コミュニティの中での自分の価値評価が
そのまま「お金」に変わるとする考え方です
極めて単純化して申し上げますと,
他者からの評価が基本となる
さまざまな「ポイント制」が導入され,
その数によってその人が経済活動に参加できる範囲が
比例的に大きくなっていくということです
つまり，
従来のようなただ単なる「貨幣」経済が終焉し，
代わって「価値」経済が台頭するということです
博士はこうした価値経済中心社会を予見して
発言なさっていたのでしょうか…
また最近では,
博士は「神などいない」と発言されたことで
話題となりました
There is a fundamental difference
between religion,which is based on authority,
and science, which is based on
observation and reason.
Science will win because it works.
宗教は権力に基づき，
科学は観察と理性に基づいているため，
根本的な違いがある
その働きで，科学が勝つことだろう
ここで「宗教」と仰る際の定義は,
「宗教哲学」ではなく,
「宗教組織」という意味合いが
多分に含まれていると思いますが,
博士はこのように科学の優位性を
強調されておられました
一方で,
このようにも発言されておられました
God may exist,
but scientist can explain the universe
without the need for a creator.
神は存在するかもしれません
しかし科学者は造物主を必要とすることなく
宇宙を説明できます
このような点では,
博士はアインシュタインとは異なる神概念を
お持ちでした
アインシュタインは次のように述べました
宗教なき科学は不完全であり，
科学なき宗教は盲目である
ユダヤ教の経典注釈書である「タルムード」が
ヒントであったと述懐しています
また, 次のようににさえ言っています
すべての宗教，芸術，科学は，
同じ一つの木の枝である
そして, 結果的に…
神の前において我々は平等に賢く，
平等に愚かである
同じ宇宙物理学者として歴史に名を刻んだ方々でも,
「宗教観」についてここまでの開きがあったことは
非常に興味深い事実です
さらにホーキング博士が止まりません…
The scientific explanation is complete.
Theology is unnecessary.
科学の説明は完全です
神学は不要です
本当にこの点に関しては,
科学者によって千差万別な意見が
あるかもしれません
そして，ビッグバンについては…
It is not necessary to invoke God
to light the blue touch paper
and set the universe going.
青い導火紙に火を灯し宇宙が始まるようにするのに，
必ずしも神を引き合いに出す必要はない
ここでは完全否定を避け,
not necessary と，部分否定を用いた上で
ややコミカルにビックバンと「神」の関係についての
考えを述べておられます
ただ博士は, ユーモアもたっぷりな方でした
何について最も考えを巡らせているか，
との質問に対して,
次のように答えられました
Women.
They are a complete mystery.
女性
彼女たちは完全なる神秘です
こうした点に関しましては,
アインシュタインも近い見解を持っていたようです
人が恋に落ちるのは，万有引力のせいではない
それでは, このへんで
