March.3.2018
野口 聡一さんは,1965年神奈川県茅ヶ崎市生まれの
宇宙飛行士です
2005年7月には
2009年12月にソユーズに搭乗して,
国際宇宙ステーション(ISS)に移って,
約5カ月間滞在しました
そして,2010年6月2日に帰還されました
人気アニメ『宇宙兄弟』でも
しばしばモデルになっておられます
先日, とある友人が
野口さんの本を読んだ時の感想を
聞かせてくれました
野口さんは受験勉強を始める時に,
まず環境作りをするということに
重きを置いたそうです
努力は続けないと意味がないから,
続けられる環境をつくることがとても大切だと…
与えらえた時間はみんな同じだから,
努力の環境や効率の勝負になってくるんだと思ったと,
知人は語ってくれました
努力の環境…
確かに, 闇雲に一生懸命努力すればいい,
とだけ思って, 劣悪な環境なのにもかかわらず,
なんら改善の工夫もしないのであれば,
効率も良くなるはずはありません
動物だって, 巣を作るのに本能的にも
環境選びをしっかりとしています
自分の努力を最大限有効活用するためにも,
無意識の力としての環境要因も
配慮するのは確かに大事だ,
と感銘を受けました
本日は,この知人のことばに触発され,
野口聡一さんの名言のいくつかを
ご紹介したいと思います
(英文拙訳)
まずは,宇宙空間で驚かれたことについての
コメントです
宇宙での生活で最初に驚くのは、
動くものは止まって見えて、
止まっているものは動くことかな。
なぞかけみたいですけど、
このふたつは大きいと思います
The first thing I was surprised at
in the life in space was
that moving things looked stationary,
and stationary things moving;
this seems to be a riddle,
but I think these two aspects are important.
生きるとは重力との戦いである,
ということばはしばしば聞かれますが,
無重力の世界では地上でのこうした「常識」が
逆転しているようです
宇宙船の中も, 私たちが映像で見る限りは
決して広く見えないのですが,
宇宙飛行士にとっては
床も壁も天井も稼働範囲ですから,
感覚的に4倍ぐらい広く思えるそうです
無重力ピザパーティ
日本でもニュースになりましたが,
野口さんは初めて船外ミッションをした時,
トラブルに会いました
初の船外活動では宇宙船に戻るハッチが一瞬、
開かずに焦りました。
しかし、退路が断たれる状況にならないよう
対応が考え抜かれていたので、
落ち着いて行動できました。
In my first mission outside of the ship,
the hatch couldn’t open once
and I was disturbed.
But I had a sophisticated manual
to deal with such an accident
in order not to let my way cut,
so, I could behave myself.
怖すぎです…!
ただでさえ宇宙遊泳している間は
宇宙でただ1人のように感じるというのに,
帰ろうとしたら,宇宙船のハッチが開かない…
でも,さすがNASA!
ハッチが開かない時の想定までしてあるとは!
事前に対応が考えられていたからこそ,
パニックにはならなかったと…
危険があると怖くなりますが、
怖さの正体を見極め、
リスクを最小限に抑えることが大切だと思います。
When you have a danger,
you may be frightened, but at that time,
what is important is to control the risk
to the minimum by identifying with the fear itself.
非常に含蓄のあることばです
恐怖が恐怖であるのは,
その対象が何なのかよくわからないからで,
もしも「正体」がはっきりとわかったならば,
自ずと恐怖は消え去ります
事前にあらゆる場合を想定し訓練される
宇宙飛行士のお仕事は,
実際の活動内容の何倍ものイメージを使って
行われていると言います
次に, 宇宙飛行士という「仕事」についてです
宇宙飛行士の仕事には、
「延期」や「待つこと」はつきもの。
受け入れて我慢できないようでは
仕事になりません。
The work of an astronaut has a lot
to do with ‘postponement’ and ‘waiting’;
if you can’t accept it nor put up with it,
you can’t do that.
「人間の最高の能力は忍耐力である」
と,仏陀は仰いました
宇宙飛行士という科学の最先端の職業の方が
しみじみこう仰ると,
感じ入るものがあります
ですが,
言う時は言わねばなりません
自信のあることは照れずに表現しないと、
周りに評価されないばかりか
チームのためにもならない。
NASAにはそういう雰囲気がある。
If you don’t express yourself about
what you have confidence with,
you won’t be evaluated by your fellows,
and what is more, that’s not good for your team;
there is such an atmosphere at NASA.
さらに野口さんは,NASAの教育法について
次のように述べておられます
大半はマニュアル通りに育成していくんですけど、
大事な肝の部分というのは
教官と生徒(宇宙飛行士)の一対一で
継承していくなど、結構アナログなやり取りも多い。
Mostly, they educate us along with the manuals,
but what is very important is succeeded to us
through the man-to-man way
of the instructor and the student(astronaut);
we have a lot of rather analog communication.
なんだか,ホッとします
では, 野口さんは日々どのような心がけをして
仕事に取り組まれているのでしょうか
どんなに悩んで苦しんでも、
時間しか解決してくれない問題というのは
あるものです
……
だから無闇に問題を解決しようとせず、
日々やらなければいけないことを
コツコツとやっていくしかないでしょう
There is a problem
that only time can solve,
no matter how annoying and suffering it may be
......
So, you shouldn’t solve it recklessly,
and there is no choice but to do
what you have to do every day
one by one.
やはり,
「コツコツ」に勝る問題解決法はないようです
水滴岩をも穿つ
最近記事にさせていただきました
マイケル・ジョーダン然り,
イチロー然り,
とてつもない仕事を成し遂げる方ほど
小さなことを大事にするという,
常識的感覚との反比例図式が
ある気がしてなりません
最後に,
野口さん御自身の経験からくる
未来の展望についてのフレーズです
宇宙から帰ってきたからといって
スーパーマンになるわけじゃありませんが、
地球との接し方は確実に変わってきます。
この美しい地球環境を
どうやって守っていったらいいのか。
僕自身、子供たちに伝えていきたいという思いが
非常に強くなりました。
You can’t be a Superman
just after you come back from space,
but the way keep in touch with the earth
will certainly change;
how can we keep this beautiful environment
of the earth?
I myself have had more desire
to inherit it to children.
五次元方程式を考案され,
CERNでその存在を確認するための実験を
指揮されておられる宇宙物理学者,
リサ・ランドール博士によりますと,
夜空を見上げて,人類が理解できているものは
わずか4パーセントに過ぎないということです
宇宙飛行士から見た地球には国境はありません
宇宙飛行士ジョン・グレン・ジュニア氏は,
こう語りました
宇宙はいまだ
恐れや憎しみや貪欲や偏見で汚されていない
外的宇宙から見た地球に国境はないです
内的宇宙の共同幻想の最たるものが国境です
宇宙飛行士たちのことばから
二次元の平面的政治的文脈を俯瞰した
三次元の立体的宇宙的文脈が
感じ取れる気がします
国家原理も,旧来の平面的コミュニケーションを脱し,
立体的コミュニケーションをとることが必要だと,
最先端科学が示唆してくれています
それでは,このへんで
ご機嫌よう!