tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語で名言を:私が美味しいといいのだけれど(谷川俊太郎)

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                                                      Feb.25.2018 

 

 

谷川俊太郎さんは,1931年東京生まれの

詩人です

 

小生は誠に僭越ながら,

現代日本のシェークスピアだと確信しております

なぜかと言いますと,

そのことばに,

いつでもどこでもどんな気分であっても,

少なからず感動するからです

 

今を去ること10年ほど前,

新宿西口のヨドバシカメラ本店

1階パソコン売り場で,人混みの中,

ベージュのジャンパーを着た160センチ位の男性と

かなり激しくぶつかってしまいました

そして反射的に,ごめんなさい,

と言って御顔を見ましたら,

なんと谷川俊太郎さんでした!

約1秒後に,呆然とする小生に,

俊太郎さんはにっこりとして,

   こちらこそごめんなさい

と言って去っていかれました

 

その夜は興奮しすぎて寝つきが悪かったです

日本のシェイクスピアは普通に街なか歩いてるんだ…

 

一文字たりともことだまを感じずにはいられない

あの詩を綴り続ける俊太郎さんが,

大のパソコン好きだと知ったのは

つい最近のことです

 

ご本人が大好きなパソコンの大きな売り場で

鉢合わせたこと,  自分で勝手に

五次元につながる素粒子衝突実験だと,

我田引水の解釈をして喜びました

 

パソコンで詩を書かれるのは,

ご本人が筆圧が強く,

紙に鉛筆で書くと破れるから嫌いだからだそうです

 

俊太郎さんは

その詩に出会うまで,

どうせ詩なんて女々しく,メルヘンチックで,

お涙頂戴の「おセンチな」ことばの群れでしょうと

思い込んでいました青二才の小生の先入観を,

ことごとく一瞬で打ち砕いて下さった,

破壊力抜群の,

こんこんとエネルギーが溢れ続ける詩ばかり書かれる,

小生のことばの恩師です

 

本日はこの,  谷川俊太郎さんの

名言のいくつかをご紹介したいと思います

 

あの時ぶつかってなければ

「谷川さん」だったのですが,

ぶつかれましたので,一方的な親近感ゆえ,

「俊太郎さん」とさせて頂いてます

 

  なお,

  俊太郎さんは,詩は書いた以上,  

  他人のものだと仰って下さっているので,

  一応他人の小生が独断と偏見で勝手に解釈し,

  お伝えさせていただきます

(英文拙訳)

 

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まずは二十代前半のデビュー作,

『二十億光年の孤独』から…

 

  万有引力というのは、

  広い宇宙の中に孤独に存在している

  ちっぽけなものたちが、

  孤独を感じて、

  他のちっぽけな存在と仲間になりたいと願う、

  その思いのことなのかもしれないな。

   Perhaps the universal gravitation is the hope

   that tiny things

   existing in the vast universe alone

   hope that they will be able to make friends

   with other tiny things,

   feeling the loneliness.

 

物と物は引き合います

それが万有引力です

この物理法則を,ほぼ

人と人にも当てはめ,

「孤独」というキーワードの磁場で

見事にことばを繋げられています

 

私たちは人ですが,

物でもあるので,

万有引力の法則には逆らえません

 

続きまして,

ひとのことばの「聞き方」については…

 

   ことばで問われた質問に、

   いつもことばで答える必要はないの。

   深い問いかけにはアタマだけじゃなく、

   ココロもカラダも使って答えなくちゃね。

   You don’t have to always answer

   to the questions with words

   by using words;

   you have to answer to the deep questions

   not only by using your mind,

   but also by using your heart and body. 

 

社会生活していく以上,

自分に向けて発せられたことばは

「聞く」責任があります

ただそれは,

ことばとことばの等価交換である必要はありません

 

俊太郎さんは詩人として

ことばを発信するお仕事を

なさっておられるわけですが,

発する以上に発せられたことばを「聞く」大切さを,

全身全霊で「聞く」べきだということを,

優しく諭されています

 

話し上手は聞き上手,

口は一つで耳は二つですから…

tsuputon7.hatenablog.com

 

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俊太郎さんのことばは,

全くのイメージだけで表現させていただきますと,

静かな最上質のカシミヤの肌触りのようです

 

いったん触れてしまったら,

その感触は他に類を見ないので,

忘れたくても忘れられません

 

真の詩性(ポエジー)とは,

それに出会うやいなや,

こちらが変化せざるを得ない

不断のポテンシャルを言います

 

   イノチはイノチを食べて生きています

   イノチを食べた私はいつかイノチに食べられる

   私が美味しいといいのだけれど

    Life is living its life by eating lives.

    I myself, who has eaten lives, will be eaten

    by lives some day.

    I wonder if I am tasty. 

 

「私が美味しいといい」という,

将来,自分を食べることになる存在に対する

柔らかで極上の気遣い

 

他者のイノチを美味しく頂いたからこその,

感謝の至高形態です

 

ブッダの前世物語『ジャータカ』を連想します

森の中で飢え死にしそうな旅人が焚き火をしていた時,

私を食べてくださいと言って,

前世でウサギだったブッダは,

自ら火の中に飛び込んだのでした

 

イノチのつながりも,

俊太郎さんにかかりますと,

物理的な食物連鎖を超越し,

こころの食物連鎖まで感じさせられます

 

この目線から,次のことばを読みますと,

途方もない深淵をのぞくかのようです

 

    人と出会ったおかげで、自分とも出会えた。

     I could meet myself by meeting others.

 

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詩は絵です

ことばという画材でどれだけの時空間を描き切るか

詩人はそのあくなき追求をし続ける画家です

 

     よるになったらほしをみる

     ひるはいろんなひととはなしをする

     そしてきっといちばんすきなものをみつける

     みつけたらたいせつにしてしぬまでいきる

     だからとおくにいてもさびしくないよ

     ぼくもういかなきゃなんない

     At night, I watch stars

     In the daytime, I talk with various people,

     and surely, I find my favorite

     Finding that, I will live till my death, cherishing it

     So, I don’t feel sorry, if you are far away

     Now, I have to go 

 

ここには無限に広がる時間と空間が

ひらがなだけの世界で展開されています

 

そして,俊太郎さんの世界は

時空間を自在に動きもします

 

   雲に乗るのもいいし、

   風に乗るのもいいし、

   音に乗るのもいいし、

   気持ちに乗るのもいいんじゃないかなあ。

   機械じゃない乗りもの、

   手でさわれない乗りものが、

   未来の乗りものです。

   I’m afraid you can get on a cloud,

   get on a wind,

   get on a sound,

   and get on a feeling.

   The vehicle that is not a machine

   and an intangible one,

   that is the future vehicle.

 

雲,風,音,そして,気持ち!

物ではなく,手でさわれない乗りもの

 

俊太郎さんの意識は五次元を予感されています

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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