tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語で名言を:踏むな、育てよ、水そそげ(山下 清)

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 山下  清『長岡の花火』

   

                                                    Feb.24.2018 

 

 

山下 清は,1922年東京浅草生まれの

放浪画家です

 

ちぎり紙で貼り絵を繊細極まりなく作成して,

戦前の日本で有名になり,

「日本のゴッホ」と称されました

 

3歳の時,消化不良が原因で生死をさまよい,

その後遺症で軽い言語障害と知的障害を患いました

 

ですが,一方で驚異的な記憶力を持っていました

放浪先で見つけられ,帰ってきた後に

各地で見た花火大会をリアルな貼り絵にしたり,

日々起こったことを日記にできました

 

昭和55年からフジテレビ系列で

芦屋雁之助さん主演で『裸の大将放浪記』という

ドラマシリーズがありました

最近はマスコミでなかなか

取り上げられないのが残念です

 

小生の実家には『山下清全集』がありました

姉の誕生日プレゼントに父親が買ったものですが,

たまにその中から数冊抜き取って,

こっそり読んだものでした

 

内容的にはほぼ失念してしまっていますが,

小学生の小生にも,ひらがなばっかりなのに

なんか深そうなことが書いていあると思った

記憶があります

 

本日はこの,稀有な世界的日本画家,

山下  清の名言をいくつかご紹介したいと思います

(英文拙訳)

 山下清 - Wikipedia 参照

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清は何のあてもなく,

汽車の線路をてくてく歩いたりしながら,

全国を行脚しました

お金もそんなにあった訳ではないので,

民家などを訪ねては,

「おにぎりを下さい」と乞うて周りました

 

この件について,おにぎりが貰えなかったら

どうするのかを問われた時の答えです

 

   おにぎりが貰えるまで歩くから、

   貰えないってことはないんだな

   I never fail to be given a rice ball,

   because I walk as long as I am given it.

 

この成功哲学

貰えるまで歩けば貰えるから,

貰えないことはない…

 

諦めないこと

努力を惜しまないこと

継続すること

 

人生哲学が凝縮されている気さえしてきます

 

清のことばには,

知的障害があったからこその

稀有な視点が多々見られます

 

   自分がいい所へ行こう行こうと思うと

   少しもいい所へ行かれない 

   いい所へ行こうとしなければ 

   しぜんにいい所へぶつかる 

   いい所へ行こうとするから 

   いい所へぶつからないんだろう

   When I try to go to a good place,

   I can’t at all.

   When I don’t,

   I happen to naturally.

   I think I can’t,

   because I try to do.

 

もはや老子の「無為自然」です

作為なく,自ら然るべき流れに身を任せよ

 

清は誰に教わることもなく

このことばを体得していたに違いありません

そういう意味で,

自分自身を知っていたのかもしれません

  

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清は時として,鋭すぎる哲学的コメントも

残していました

 

    死んだことのない人が、

    死んだ人のことがわかるかな

    I wonder if a person who hasn’t died

    can understand those who are dead.

 

これはソクラテスが毒杯を仰ぐ前に,

死ぬのが怖くないのかと問われた時,

 

死んだことがないのにどうして死を恐れられようか

 

と答えたのと同じ境地に思えます

 

私たちは死の予感や恐怖に怖がれても,

死そのものを怖がることはできません

死とは何かなど,分かりようないのですから

 

また,ゴッホについて聞かれて,

清はこのように答えています

 

ゴッホは生きている間はちっとも絵が売れないので 

売れないのは自分の絵がヘタクソだからと思って

がっかりして死んだので 

死んでから皆がゴッホは偉いと言っても 

死んでいるゴッホには聞こえない

Gogh couldn’t sell his picture at all during his life,

and died disappointed at the thought

that his pictures didn’t sell,

because they were bad; so, even if everybody says

Gogh is great after his death,

the dead Gogh can’t hear it.

 

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日本平よりの富士

 

さらに,世界中の親御さんと教育者の方々に

覚えていて頂きたいと切に思います一言です

 

    踏むな、育てよ、水そそげ

     Don’t stomp, grow, water it!

 

おそらく,

小さな花について言いたかったのでしょう

ですがこれは優れて自然発光している

教育哲学だと思います

 

英語の「教育する」に当たります動詞 educate は,

分解しますと,

e + duc + ate で,順に

外に+引き出+させる

という含みを持ちます

つまり,「教育する」とは,

「本人のポテンシャルを外に引き出させる」

ことだという語源解釈ができるのです

 

不道徳な大人たちが人為的に作り上げた「道徳」を

詰め込もうとするのは,input です

子どもはコンピュータではありません

 

清には自分も含め生きとし生けるものが

自然に育まれているのだという確信めいた直感が,

あったのでしょう

 

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桜島

 

清は兵役を逃れたい一心で放浪を続けていました

ただただ,絵を描いていたかったのです

 

ぼくは、ぼーとしているのが、やっぱり一番いいな

So, I like to be beside myself best.

 

だからこそ,

 

    上手に逃げよう。

     I’ll run away well.

 

これなどはバブル期のニューアカデミズムで,

浅田彰氏が書かれた『逃走論』の

スキゾキッズの標語を彷彿とさせます

 

社会を利用する人と社会に利用される人がいます

自分を利用しようとしてくる社会に

周りの同年代の人たちが同調圧力も働いて,

みんなこぞって利用されようとしていく中で,

一人,清は逃げました

 元来,あって然るべき本能・知恵でしょう

 

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群鶏

 

 

そうした思いには,わがままとか,

自分勝手とかでは片付けられない,

清の深奥な平和への祈願が根底にありました

 

みんなが爆弾なんか作らないで、

きれいな花火ばかり作っていたら、

きっと戦争なんて起きなかったんだな

The war couldn’t have happened,

if everybody had made only beautiful fireworks,

not bombs.

 

ノーベルが聞いたらきっと号泣ことばでしょう

 

清の花火に対する愛は,

孤独な放浪をしつつの,

社会の平和への祈りでもあったのです

 

同じ爆発でも,

美に向かうものと醜に向かうものとがある…

 

芸術も,バクハツです!

 

   今年の花火見物はどこに行こうかな

    Where shall I go to see fireworks this year?

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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富田林の花火