tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:一人ひとりの人間が究極の絶対的な自由を持っている。(サルトル)

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                                                        Feb.10.2018

 

 

ジャン=ポール・サルトル

1905年,フランス生まれの哲学者です

 

主著に『存在と無』『嘔吐』があります

のちにフッサールハイデッガーを始め,

幅広いジャンルの哲学者・文学者たちに

多大な影響を与えました

 

生涯の伴侶は女性哲学者ボーボワールで,

互いの自由を束縛しない「契約結婚」の

内縁状態で50年間過ごしました

 

1964年にはノーベル文学賞に選出されましたが,

ブルジョワ社会の習性だとして受賞を拒否しています

その他の公的な賞も全て拒否しました

 

あのフランス人特有の個が社会を動かすと考える

自我の強さは,サルトルが模範だとさえ言われます

 

本日はこの,

哲学者の立場から文学・政治にまで言及し,

世界中の学生運動などに多大な影響力を持った

サルトルの名言をいくつかご紹介したいと思います

 

 

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ジャン=ポール・サルトル 

 

まず,「自由」についてのサルトルの考え方です

 

Freedom is it should be free

and to become to be inconvenient.

自由とは、自由であるべく、

不都合になることである。

 

…一見,分かりづらいコメントですが,

自由を求めるには,自由になろうと

苦労しなくてはならない,

という意味です

国家権力に個が抑圧されるのではなく,

個が国家権力をコントロールすべきだと

考えていましたサルトルならではの見地です

 

自らの生を全うすべく必要な最大前提,

それが自由だとしたのです

 

The man is free

and should always behave by his choice.

人間は自由であり

つねに自分自身の選択によって行動すべきものである。

 

まさしく「自由意志」の定義のような一文です

「つねに」がポイントです

どんな時であれ,自身の選択で行動すべきだ

個の解放に主眼をおくサルトルの自由宣言です

それは次の句に集約されています 

 

Individual’s man has the last absolute freedom.

一人ひとりの人間が究極の絶対的な自由を持っている。

 

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あらゆる既得権益に対し,サルトル

個人の「自由」の観点から,

過去ではなく未来を志向する人でした

 

Man is not the sum of what he has already,

but rather the sum of what he does not yet have,

of what he could have.

人間は現在もっているものの総和ではなく,

彼がまだもっていないもの,

これからもちうるものの合計である。

 

今現在からしての未来に向けた可能性の合計,

それが人間であり,

過去から積み上げてきたものの総和ではない

 

これは今聞いても新しく感じられます

世の中には既得権益が氾濫しているからでしょう

 

それを指してでしょうか,

「嘘」 について次のように述べています

 

A lie is the one born in the society

which splits up into the classes,

not the one I made.

So I inherit a lie while being born.

 嘘とは、私がつくったものではなく、

階級に分かれた社会に

生まれたものである。

だから私は生まれながら嘘を相続している。

 

階級社会では各レベルでの

「嘘」=「既得権益」が必須です

それの恩恵を受けずして,各階級の人たちは

生まれつくことができません

すでに親が恩恵を受けているわけですから

そういう意味で誰しもが

「生まれながら嘘を相続」している

 

あまりにレーザー・シャープな表現です

私たちの存在する第一前提が嘘であるとする洞察は,

仏教の色即是空にも通じる何かがある気がします

「色」という前提がなければ,

社会は成立しないからです

 

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こうした意味で,

サルトルはあまりにも現実主義的でした

 

   Hell is other people.

   地獄とは他人のことだ。

 

サルトルの言う他人とは

自分から自由を奪うものすべてです

ボーボワールとでさえ,互いの自由を束縛しない

「契約」をして同居したわけです

頭脳明晰であるが故の悲劇でしょう

 

When the rich make war, it’s the poor that die.

金持ちが戦争を起こし、貧乏人が死ぬ。

 

もう,もう,その通りです

としか言いようのない真実です

さらに,資本主義社会については…

  

A present-day capitalistic society has no lives.

Something to have that is only free fate.

 現代の資本主義社会には生活はない。

あるものはただ宿命だけだ。

 

資本主義社会では他者という地獄に取り囲まれ,

金持ち同士の戦争で貧乏人が命を落とし,

ものごとは勝手に延々と進んでいく宿命しかない

 

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約半世紀も前にここまで資本主義社会に

警鐘を鳴らしていたサルトル

 

…彼のとっての希望の光は,

やはり個人の自由しかありませんでした

 

Everything has been figured out,

except how to live.

すべての答えは出ている,

どう生きるかということを除いて。

 

宿命の決められた社会にあって,

「どう生きるか」だけは

かろうじて私たちの自由として

残されし秘境であるはずだ

 

だからこそサルトル

これほどまでに「自由」を

叫び続けたのでしょう

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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