tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:私たちは他民族より優れていることを私たちの民族が示すことに誇りは持たない(カズオ・イシグロ )

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   カズオ・イシグロ 

                                       

                                                       Feb.7.2018 

 

 

 カズオ・イシグロは1954年,

長崎県長崎市生まれの

日系英国人小説家です

 

壮大な感情の力を持った小説を通し,

世界と結びついているという,

我々の幻想的感覚に隠された深淵を暴いた

という理由で,2017年にノーベル文学賞

受賞されました

 

代表作に『日の名残り』『わたしを離さないで』

忘れられた巨人』などがあります

 

作家の中島京子さんは,

キリスト教文化圏の感受性を持ちながら,

英国文学の伝統の最先端にいる

傑出した現代作家である

としています

 

現にイシグロ氏は祖国日本で

今回のノーベル賞受賞が大きく話題となったことを

とても喜んでおられます

 

その思いは,ノーベル賞受賞式のスピーチに

あふれていました

 

本日はこの,カズオ・イシグロ氏の

そのスピーチから,名言をいくつか

ご紹介したいと思います

カズオ・イシグロ - Wikipedia

(英文拙訳)

 

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まずはスピーチの冒頭部でイシグロ氏は

御自身の本の1ページにあった絵の説明をされています

西欧の男の顔の後ろの一方に爆発による煙とほこり,

もう一方には煙の中から空へ昇っていく

白い鳥がいました

そして,ご本人は…

 

I was five years old,

lying on my front

on a traditional Japanese tatami floor.

私は5歳だった

伝統的な日本の畳の上に

腹ばいになって横たわっていた

 

長崎の原爆投下の際の

のんびりした5才の男の子の

イメージが,背景とのコントラストで

見事に描かれています

 

そしてなぜ,このシーンかと言いますと…

 

Perhaps this moment left an impression

because my mother's voice,

somewhere behind me,

was filled with a special emotion

as she told the story about a man

who'd invented dynamite,

then concerned about its applications,

had created the Nobel Sho -

I first heard of it by its Japanese name.

おそらくこの瞬間が印象を残したのは

母の声が,どこか私の背後からして,

特別な感情に満ちていたからだ

それは母がダイナマイトを発明した人の話を

語った時だった

彼はその使われ方を心配して,

「のーべるしょう」を作ったのよ,と

私は初めて日本語の名前でそれについて聞いた

 

ダイナマイトの発明者ノーベルが

ノーベル賞を作ったことを,

お母様は5才の息子に

噛み砕いて説明されています

 

そしてお母様は「のーべるしょう」の存在意義を

次のように付け加えます

 

The Nobel Sho, she said, was

to promote heiwa

- meaning peace or harmony.

「のーべるしょう」はね,  と母が言った,

ピースやハーモニーって意味の「へいわ」を

促進するべきものなのよ

  

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 ノーベル賞メダル

 

 

イシグロ氏はノーベル賞とオリンピックでは,

「誇り」の質が違うとした上で,

次のように述べています

 

We don't feel the pride of our tribe

demonstrating superiority over other tribes.

Rather, it's the pride that comes from knowing

that one of us has made a significant contribution

to our common human endeavour.

The emotion aroused is

a larger one, a unifying one.

私たちは他民族より優れていることを

私たちの民族が示すことに誇りは持たない

むしろ,その誇りとは,

私たちの内のある人が

人類共通の活動に重大なる貢献をしたと知って

もたらされるものだ

そこで引き起こされる感情は

より大きなもので,世界を一つにするものだ

 

世界各国がこぞってグローバル化の反動で

孤立主義を深めつつある現在に,

イシグロ氏のこの発言は

ノーベル賞受賞を通じての同氏の

「世界を一つにする」

という切なる願いを表しています

 

受賞理由の

「世界と結びついているという,

我々の幻想的感覚に隠された深淵を暴いた」

という下りがうなづけるコメントです

 

 

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こうした意味で,カズオ・イシグロ氏にとって

今回の受賞の意義は

愚直なまでの平和宣言とも捉えられえます 

 

Like literature, my own field,

the Nobel Prize is an idea that,

in times like these,

helps us to think beyond our dividing walls,

that reminds us of what we must struggle for

together as human beings.

私自身の分野である文学のように,

ノーベル賞は,こうした時代において,

私たちの分断している壁を超えて考える

手助けとなり,

人類として共に求め奮闘しなくてはならないものは

何なのかを思い出させてくれるアイデアである

 

専門化・細分化・分断化のベクトルにあらがい,

あくまでグローバル化の何たるかを

再認識させてくれるもの,

それがノーベル賞だとされています

 

スケールの大きな話しを

端的にまとめることの意味が

どのくらいあるかはわかりません

 

個人的には専門分化すべき領域と

一体化していく領域とを認識して,

各民族が自己アイデンティティ

ミルフィーユの如く多層に持っていることを

踏まえた上で,

積極的に各レベルでのコミュニケーション

を多様にしていくしか

方策はないのではと思っています

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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