tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:愛は「自由の子」であり,決して「支配の子」ではない(エーリッヒ・フロム)

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                                                              Jan.19.2018

 

 

エーリッヒ・フロムは 1900年,

ドイツに生まれた心理学者です

 

主著『自由からの逃走』では

「束縛のない自由はない」

という立場から,

ファシズムや民主主義社会を

心理学的に分析しています

権威主義を「自由からの逃走のメカニズム」

によるものだとしたことでも知られます

 

彼の思想は

フロイト以降の精神分析家の考え方を

社会情勢全域に応用させたところに

特色があるとされます

 

本日は,このエーリッヒ・フロムの

名言のいくつかをご紹介したいと思います

 

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 エーリッヒ・フロム

本人「エーリック」と呼ばれたかったそうです…

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まずは,  社会の根本原理とも言えます

対人関係についてのコメントです

 

    Only the person who has faith in himself

    is able to be faithful to others.

    自分自身を信じている人だけが

    他人に対して誠実になれる

 

フロムの言う「自分自身を信じている人」とは,

自分の可能性をあくまで追求し続けようとする

姿勢を持つ人のことだったと思われます

その姿勢がある人は,

他人にもその人独自の可能性を認め,

その追求の手助けをしようとするものです

そうして初めてその人に誠実になれる,

ということでしょう

 

また,  権力欲に関して… 

 

    The lust for power is

    not rooted in strength but in weekness.

    権力欲は

    強さでなく弱さに根ざしている

 

この発言はフロイトユングのコンプレックス論を

踏襲していると思われます

 

誰でも自分の弱さを見られたくない,

隠したいと思うものです

そうしたコンプレックスを持たない人間は

存在しえないとさえ言われます

  

劣等コンプレックスは同時に

優等コンプレックスでもあります

自己と他者の優劣を比較し続けるという点では,

心の働き上何も変わらないからです

 

その弱さを隠蔽するためにも強がってしまう…

これは子どもにも見られる心理的です

 問題は,その「程度」です

 

大人になってもその思いが満たされず,

それどころか延々と積み重なっていた果てには,

最終的に国を支配してやるだとか,

世界を支配してやるといった,

倒錯した妄想の果ての狂気=権力欲をすら

生み出すことになってしまいます

 

他者のためを思う権力…などということばは,

この見地からしますと自己矛盾に陥っています

 

 

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フロムのもう一つの代表作に

『愛するということ』があります

その中から,「愛」についての

印象的なコメントをご紹介いたします

まずは,  

なるほど…と納得してしまいましたものから… 

 

     Immature love says:

    “I love you because I need you.”

    Mature love says:

    “I need you because I love you.”

    未熟な愛は言う,

    「愛してるよ、君が必要だから」と

    成熟した愛は言う,

    「君が必要だよ、愛してるから」と

 

必要が先なのではなく,  愛が先なんです!

必要が先であれば,  物欲や金欲などと変わりません

 

最初に愛がある,だから君が必要になる…

そこでは,

精神の,物理に対する優位が現れています

 

だからこそ,  愛は主従関係であってはなりません

 

    Love is ‘a child of freedom’,

    never ‘a child of ruling’.

    愛は「自由の子」であり,

    決して「支配の子」ではない

 

「子」とする感性にしびれます

 

「支配の子」は権力です

「自由の子」こそが愛です

 

権力構造に基づく関係には

ギブ・アンド・テイクしかありませんが,

愛に基づく関係は

ギブ・アンド・ギブとなるはずです

そこには全く見返りを求めない

エネルギーの発露があります

太陽の如く… 

 

そして,  その内なる太陽の輝きが

自らの信念となって初めて,

本当の愛の表現が可能となります

 

    Love is an act of faith,

    and whoever is of little faith is

    also of little love.

    愛とは信念の行為であり,

    わずかな信念しかもっていない人は誰でも

    わずかしか愛することもできない

 

エネルギーとしての愛を

「信念」にまで昇華した人が初めて,

その程度に応じて愛することもできる

 

そして,  太陽が大木も雑草も遍く照らすように,

愛は小さく些細なものでさえ

何の区別もせず降り注ぎます

   

     It is not until you love something

     not useful to you

     that your love blooms.

    自分の役に立たないものを

    愛する時にはじめて

    愛は開花する

 

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フロムのメッセージは

端的明瞭で力強いものばかりです

精神分析家のコメントとしましては,

異色のシンプルさだと思います

その一貫した姿勢の根本には

はっきりとした一本の筋が常に見て取れます

 

    Not he who has much is rich,

    but he who gives much.

    たくさん持っている人が豊かなのではなく,

    たくさん与える人が豊かなのだ

    

権力者はたくさん持っていることを誇示したがります

コンプレックスが強いからです

そして,それを無批判に容認してくれる「弱者」だけを

自らの傘下に置き,  寵愛します

 

ですが,寵愛は純愛たりえません

 

こうした「縦社会」的な病んだ図式が

現代日本でも世界でも,

いかに蔓延していることでしょうか…

そしてそれが国家レベルになったときには,

当然のことながら戦争の原理となってしまいます

 

ダライラマ14世は17,390,000人のフォロワーを有する

ツイッター(@DalaiLama)で,

先日次のように呟いておられます

和文拙訳)

 

Modern education pays little attention

to inner values

and yet our basic human nature is

compassionate.

We need to incorporate

compassion and warm-heartedness

into the modern education system

to make it more holistic.

現代の教育は内面的価値に

ほぼ注意を払っていません

しかし私たちの基本的な人間の本性は

慈悲的なものです

私たちは現代教育システムを

より全体的なものとするために

その中に

慈悲と思いやりを

取り入れる必要があります   

 

慈悲と思いやりが

フロムの「与えること」に相当すると考えますと,

ダライラマ14世もギブ・アンド・ギブの切なる重要性を

説かれているのだと思います

 

 

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ダライラマ14世

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最後に,フロムは50年ほども前に

とかくAI化についてとみに論じ始められています

現代世界についての,

驚くべき予言をしていました

 

    The danger of the past was

    that men became slaves.

    The danger of the future is

    that men may become robots.

    過去の危険は

    人間が奴隷になることだった

    未来の危険は

    人間がロボットになるかもしれないことだ

 

もはや,

本当にSFでも洒落でもなくなってきています

 

ただ,  ロボットは慈悲や思いやり,

つまりは愛を与えられるのでしょうか… 

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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