tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:人間が時間を節約すればするほど, 命はやせほそって,なくなってしまうのです(ミヒャエル・エンデ)

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サルバドール・ダリ『記憶の固執

                                                             Jan.15.2018

 

 

 

ミヒャエル・エンデは1929年ドイツ生まれの

児童文学作家です

 

代表作に『モモ』,そして映画化され大ヒットしました

『ネバー・エンディング・ストーリー(はてしない物語)』

があります

1989年には,後者の日本語版翻訳者佐藤真理子さんと

と結婚しています

 

個人的な思い出としましては,

20年以上前になりますが,

NHKのドキュメンタリー番組で特集された際,

大江健三郎さんとの対談で,

 

第三次世界大戦はすでに始まっているのです

子どもたちの心の中でそれはもう勃発しているのです

そのことを私たち大人はまず気づかなければならない

 

と,目を潤ませながらおっしゃっていたのを

鮮明に記憶しています

 

確か,  「心の環境破壊」という表現も

されていた気がします

 

また,  『モモ』のテーマである「時間泥棒」

というキーワードも印象的です

ある意味で,  資本主義社会の必然的矛盾を

エンデなりに表そうとした考え方だと思います

子どもが大人になるにつれて

「時間泥棒」になっていく様を見事に描いた

フレーズがありました

 

しだいにしだいに子どもたちは

小さな時間貯蓄家といった顔つきになってきました

やれと命じられたことを

いやいやながら,おもしろくもなさそうに

ふくれっつらでやります

そしてじぶんたちの好きなように

していいと言われると

こんどはなにをしたらいいか,

ぜんぜんわからないのです

 

まさに,指示待ちマニュアル人間=時間泥棒と

考えていたようです…

 

本日は,このミヒャエル・エンデの名言のいくつかを

ご紹介したいと思います

(英文拙訳)

 

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 ミヒャエル・エンデ

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 Salvador Dali: Melting Watch 

 

 

 まずは,  日本の禅を思わせるようなフレーズです

 

  Just concentrate on the next step, the next breath,

  the next stroke of the broom,

  and the next, and the next.

  Nothing else.

  つぎの一歩,つぎの一息,

  つぎのほうきのひと掃き,

  そしてそのつぎ,そのつぎのことだけに集中するんだ

  何もほかに考えちゃダメだ

 

今に次ぐ今に次ぐ今…

禅ではよく「今・ここ」に注意喚起するために

こう言われます

 

とかく忙しい時には,

なんでもいいから,早く済ましてしまおうと

ざっくりとしたところから入りたくなりますが,

こうしたエンデのことばに触れますと,

そのざっくり感が後々結局

無駄な時間を過ごす原因になってしまっていたという

よくある一人芝居のオチを避ける知恵だなあ,と

しみじみ思います…

 

次に,  夢についての一言です


    What is the most dangerous in our life is

    that we can reallize the never ending dream.

    人生でいちばん危険なことは,

    かなえられるはずのない夢が

    かなえられてしまうことなんだよ

 

かなえられるはずのない夢がかなえられてしまう…

 

これはファンタジー作家としては

許せないこと= 一番危険なことだったのでしょう

 

夢は叶えられたら夢でなくなります

何か目標達成してしまった時の,

燃え尽き症候群ということばがかつてありましたが…

 

 

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Marc Chagall: Le Pont de Passy et la Tour Eiffel

 

 

続きまして,  こちらも禅を彷彿とさせる名言です


    The more you cling to yourself,

    the more you lose your self.

    The more you lose yourself,

    the more you become you yourself.

    自己に執着すればするほど,

    人は真の自己を失う

    自己をなくせばなくすほど,

    人はその人自身になる

 

自分を無にすればするほど満たされていく

 

禅の源流であります『老子』には,

 

    誰も行かない谷底に行くが良い

    そこにはエネルギーが満ち溢れている

 

というメッセージがあります

「自分が,自分が」と,はやる気持ちは,

生来の自分の姿からどんどん

自分を遠ざけてしまうものだと

エンデは訴えているのだと思います

  

彼はまた,折に触れて「時間」について

コメントしています

しかもそれを,子ども向けの作品で,です

それほどに時間について考えなさい,

時間泥棒になんかなるんじゃない!

と叫び続けようとしていたのでしょう


     We have the eyes to see the light,

     and we have the ears to hear sounds;

     so do we have the heart to feel time.

     If the heart doesn’t feel time,

     it’s just like you don’t have it.

    光を見るためには目があり,

    音を聞くためには耳があるのとおなじように,

    人間には時間を感じとるために心というものがある

    もしその心が時間を感じとらないようなときには,

    その時間はないもおなじだ

 

世界的な大富豪たちに「何が一番欲しいですか?」と

ある日本人作家がアンケート調査したところ,

口を揃えて,

「時間」

と答えられたそうです

 

五感による認識と同じく,

私たちは心で時間を感じる,

そしてそれが感じられなくなったら,

もはや時間泥棒になってしまっている…

魂を売ってしまった抜け殻のような人体でしかない,

ということでしょう 

 

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 Max Ernst: Gala Éluard

 

 

さらにエンデは,このようにさえ述べます


    Time is just life,

    and life is in the human heart.

    the more time one saves,

    the thinner their life becomes,

    and at last, disappears.

    時間とはすなわち命なのです

    そして命とは人間の心の中にあるものなのです

    人間が時間を節約すればするほど,

    命はやせほそって,

    なくなってしまうのです

 

時間は命であり,  人間の心の中にある

だから,  それを節約するにつれ,

命もすり減らされてしまう…

 

だからこそ,  エンデは子どもたちに忠告します

 

    One has to decide

    how to use one’s own time.

   人間は自分の時間をどうするかは,

   自分できめなくてはならない

 

もうここまで来ますと,

エンデのメッセージは子どもというより

大人が読んだほうがいい気がしてきました… 

 

小生はアウグスティヌス に倣い,

時間=過去(記憶)+未来(予測)で,

現在=無時間性と考えることにしています

 

エンデの言う「時間」は,くしくも

小生の考えます,「永遠の今=無時間性」のことだと

改めて確信いたしました

 

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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岡本太郎『若い夢』