tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:人間は誰でも体の中に百人の名医を持っている(ヒポクラテス)

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                                                       Jan.14.2018

 

 

ヒポクラテスは紀元前460年頃,

ギリシアに生まれた医師です

 「西洋医学の父」と称されます

 

ヒポクラテス の誓い」は,

今でも日本や海外の医学部の多くで

医師たるものの教訓の極みとされています

現在医学部で行われます白衣授与式は

ヒポクラテスにちなんだものです

 

人間は血液・粘液・黄胆汁・黒胆汁の四体液をもち,

それらが調和していると健康であると考え,

自身の医学体系を確立しました

 

彼は数あまたの業績を残しました

現代の私たちの生活に,あまりにも

溶け込んでいるものが多いです

 

たとえば…

 

風邪予防対策,

公衆衛生によるペスト対策,

はしか治療,

プロポリスによる蜂蜜療法,

健康のための歩行の推奨,

ハーブ療法による治療,

芳香風呂によるアロマテラピー

「最良の薬」 としてのワインの薬効研究,

プラセンタ(胎盤)の効能の指摘,

クレオパトラもやったクレイセラピー(粘土療法),

海藻や海土を使ったタラソセラピー(海洋療法),

 

などなど,

これらすべての先駆者と言われています

 

また,とりわけ食事療法にも関心を持ち,

果物や野菜の効用(とくにキャベツ)を指摘して,

自らジャガイモと様々な野菜をその水分のみで

低温加熱して作った「ヒポクラテススープ」の開発も

しました

ポトフの原型でしょうか…

 

本日は,プラトンアリストテレスにも

影響を及ぼしたとされるこのヒポクラテスの,

健康に関する名言をいくつかご紹介したいと思います

(英文拙訳)

 

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ヒポクラテス 

 

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ギリシアアテネパルテノン神殿

 

  

まずは,病気について…

 

    All the diseases come from the intestine.

    すべての病気は腸から始まる

 

腸は第二の頭脳と言われます

脳内の神経伝達物質の要,

セロトニンの95パーセントほどが

腸で作られているとする研究もあるようです

 

また昨今,「腸内フローラ」というキーワードで

ヨーグルトや納豆などによって

腸をケアする必要性がよく説かれています

 

先日マツコ・デラックスさんの出ておられた番組で,

盲腸は切らない方がいい,

という衝撃の研究結果が出たというお話がありました

じつは盲腸が腸内フローラを

コントロールしているからだそうです!

 

直感=内臓感覚,

ということが言われます

たしかにお腹の調子は頭も含めて

全身に直結していることは,

感覚的にも分かる気がします

 

次に,歩行の効用についてです

 

   Walking is the best medicine to us human beings.

   歩くことは人間にとって最良の薬である

 

 二千四百年ほども前に,すでにウォーキングの効用を,

 しかも「最良の薬」とまでに

ヒポクラテスは絶賛しています

約一世紀後のソクラテス

散歩しないとうまく哲学できない,

とさえ言っています

 

単純に大腿部のハムストリングが

脳に直結しているからでしょうか,

頭のさえない時に適度な散歩をすると

嘘のようにスッキリすることがあります

 

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また,医と食につきましては…

 

    Fasting a month prevents diseases.

    月に一度断食をすれば病気にならない

 

これはインドのヨガでもよく聞くことです

浄化作用と言いますか,

過食は万病の元と言いますか,

やれれば越したことはないのかも知れません

現状小生はせいぜい,ディナーのメインを

リンゴ一個にするくらいなのですが,

それでも翌日はスッキリします

 

    Regard your meals as medicines,

    and medicines as your meals.

    汝の食事を薬とし,

    汝の薬は食事とせよ

 

まさに医食同源

中国漢方の源流であるインドのアーユルベーダでも,

すでにこの認識はあったようです

 

当然といえば当然ですが,

私たちは「食べたもの」です

食=身体という認識は,

不摂生の故でしょう,

何度言われても新しく感じます

 

   Any disease can be cured by dieting  and exercises.

   病気は食事療法と運動によって治療できる 

 

食と運動による病状改善,

今でこそマスコミがこぞって番組を組んでいますが,

すでに二千四百年以上前に,ヒポクラテス

ここまで断言していたのです

 

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さらに,自然と病気についてです

 

    The farther a person is from nature ,

    the more likely the person gets sick.

    人は自然から遠ざかるほど

    病気になる

 

都市生活者には何も言えないコメントです… 

ただ,  自分の身体という内的自然環境に目を向ければ,

光も見えてくる気が…

 

    It is the natural healing power in our selves

    that cure our diseases.

    私たちの内にある自然治癒力こそ

    真に病を治すものである

 

ハーブティーによる療法など,

ヒポクラテスの治療法は,

あくまで外部から体内への侵襲的なものではなく,

可能な限りその人自身のポテンシャルによって

健康維持を目指そうとするものでした

 

こうした方向性から,

ヒポクラテスは医師の立場を次のように考えています

 

     A disease is something

     that one cures for oneself naturally,

     and doctors are just the assistant.

     病気は人間が自らの力をもって

     自然に治すものであり

     医師はこれを手助けするものである

 

お医者さんはただ手助けする存在であり,

あくまで病気を治すのは本人の自然な

自己治癒力による,というのです

 

とかく自我や主張の強い残念なお医者さんの

云々が報じられやすい昨今の日本にあって,

このシンプルこの上ないメッセージが

新鮮に聞こえてしまうのは,

何故なのでしょう…

 

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最後に,心と体についてです

 

  All that occurs in the mind influence on the body,

  and vice versa.

   心に起きることはすべて体に影響し,

   体に起きることもまた心に影響する

 

患者さんのクォリティ・オブ・ライフ

(quality of life : QOL「生命の質」)

を優先する発想を,すでに

ヒポクラテスはしていました

 

この対概念が,延命治療に代表されます

サンクティティ・オブ・ライフ

(sanctity of life : SOL「生命の尊厳」) です

 

「生命は何より尊い」とする発想で,

1分1秒でも何としても生命は尊重されねばならない,

とする立場です

近代医学の本流でもありますが,

この頃では特に臨床の現場から,医師ではなく

患者さん中心の医療に対する要望が高まってきて,

QOLの向上が叫ばれています

 

ただ,逆に患者さんのネットなどでの

医学情報収集力も高まり,

お医者さんに診断してもらう前に,

「こういう症状だからこの薬出してください」

 とまで要求するしてしまう

モンスター・ペイシェントも続出しているそうで,

医者のQOLも考えて欲しいと,ワインに酔いながら,

知り合いの精神科医が先日ぼやいてました…

 

兎にも角にも,健康はかけがえのない富です

ヒポクラテスは,それは与えられるものではなく,

私たちが内側から自分に生み出すものだと

考えていたのでしょう

このような至言さえ残すほどですから…

  

 Anyone has a hundred great doctors in the body.

 人間は誰でも体の中に百人の名医を持っている

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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Henri Matisse: Dance(1)