tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言::私たちは不必要なものが唯一の必需品である時代に生きている(オスカー・ワイルド)

f:id:tsuputon7:20171214131932p:plainPiet Mondrian: Composition II en rouge, bleu et jaune                                                           

 

                   Dec.14.2017

 

オスカー・ワイルド

アイルランド出身の詩人・小説家でした

彼の作品は森鴎外夏目漱石芥川龍之介にも

影響を与えたと言われています

 

医師の家庭に生まれ,オックスフォード大学を首席卒業

した一方で,文学サロンなどで過激な言動をし,

幼少期は母から女装をさせられたためか,

パリでは奇抜な服装で友人ができなかったとか…

その後各国を転々としつつ,

晩年は日の目を浴びずに過ごしたそうです

 

こういう奇行性のある方には

必然的に興味が湧いてきます

 

本日は,ワイルドの名言を見ていますと,

独特のレトリックに面白みを感じましたので,

その一部をご紹介したいと思います

 

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 Vasily Kandinsky: Kleine Welten I (Small Worlds I)

 

 

まずは,あるあるな指摘から…

 

     The optimist sees the doughnut,

     the pessimist sees the hole.

    楽観主義者はドーナツを見て,

    悲観主義者はその穴をみる

 

心理テストで,

 

    コップに水が半分入ってます

    多いですか,少ないですか?

    何か一言コメントをしてください

 

 というのがあります

 

この日常的シチュエーションに対してどうコメント

されるでしょう?

 

さまざまな答えが想定されるかと思いきや,

意外なほど単純に二通りしか出ないようです

 

「半分しかない」と答える方は悲観主義的傾向が,

「半分ある」と答えた方は楽観主義的傾向があると

  されます

 

これは拡大解釈しますと,生活の上でや仕事中,

またスポーツの試合中などの状況判断する際の,

「内なる声」にも通じる何かだと思われます

 

ワイルドは1世紀以上前の人ですが,

卑近なドーナッツを喩えに使い,

同様の指摘をしています

意外なほどこの二元論は当てはまる気がします…

どーなってるのかな…

 

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続きましては,かなりユニークな一言です

 

    Most people are other people.

    Their thoughts are someone else’s opinions,

    their lives a mimicry,

    their passions a quotation.

 

    ほとんどの人々は他の人々である

    彼らの思考は誰かの意見,

    彼らの人生は模倣,

    そして彼らの情熱は引用である

 

ほとんどの人々=他の人々?

なんのことだろうと思ってますと,

思考=他者の意見,

人生=模倣,

情熱=引用,

だというわけです

つまり,主体性が欠けている,と…

 

上の二つは確かになと,ストンと腑に落ちるのですが,

最後の情熱が他者の「引用」とされている所に

考え込まされました

 

自発的情熱を持つには自家発電的に

内なる子どもが発光するしかありません

ですが,社会的要請その他によって

その発光が消されますと自分の持つ情熱は借りもので,

つまりはエネルギーの引用に過ぎない,

ワイルドはそう言いたかったのかな,

とゆるゆる思います

 

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続きまして,習慣について次のように述べています

 

 One regrets the loss even of one’s worst habits.

 Perhaps one regrets them the most.

 They are such an essential part of one’s personality.

 

 人は自分の最悪な習慣でさえ失うと後悔する

 おそらく最も後悔するだろう

 それらはそれほどその人の人格の本質的な部分である

 

「習慣は第二の天性である」と言います

習慣なしに生きていくことはどんな「自由人」にも

できません

反復は習慣を作り,その習慣を維持した結果がほぼ,

私たちという存在といっても過言ではないでしょう

そういう意味で,

最悪なものであれ習慣に執着してしまいます

自分の人格のコアですから

破壊は再生ですが,

わかっていても変えられないのが

習慣というものでしょう

 

ワイルドはその慧眼で,

習慣がその人の人格の本質を作っていると

看て取ります

 

ブッダは原始仏典『スッタ二パーダ』で

 

   人は生まれではなく

   行いによってバラモン(聖人)となる

 

と語られました

 

行動の基礎が習慣だという事実を踏まえますと,

「人の発言ではなく行動を見よ」と

しばしば言われる理由も,

ワイルドのことばを元に考えると

分かりよい気がします

 

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 Paul Klee: Municipal Jewel

 

 

ワイルドの人生論は端的明瞭なものです

 

    Life is not complex.

    We are complex.

    Life is simple,

    and the simple thing is the right thing.

 

    人生は複雑じゃない

    私たちが複雑なのだ

    人生はシンプルだ,

    だからシンプルなことが正しいことだ

 

はい,その通りかも知れません

ジョブズも,老子も,ほぼ同じことを言っていました

人生はシンプルなのだから,シンプルなことは正しい…

 

ただただ,美しいことばです

 

こうした人生観を持っていたワイルドからすると,

一世紀以上前のヨーロッパでさえ,

次のように思えたのでしょう

 

  We live in an age

  when unnecessary things are our only necessities.

  私たちは不必要なものが

  唯一の必需品である時代に生きている

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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Piet Mondrian: Broadway Boogie Woogie

 

 

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